2016年2月。東京。中学入試。変革。

東京・神奈川で中学入試が始まる2月1日。
 
まだ渦中ですが、一夜あけると少し空気が変わります。
 
ただ、今年は、多様な形で入試に臨む子ども達の存在感のようなものが増しているのを感じ、本当に、中学入試は変わっているのだと思わせられています。
 
1日の試験が「大本命日」とも限らない・・・など、東京の中学入試全体の空気が、新しい質を含みながら、なんとなく動いている気がします。
 
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朝日新聞2016年1月30日夕刊

 
 
 
 
昨年は・・私は・・・、1日の夜に、信じられないことに倒れて、その日の最後の入試結果の報を、夜、病院で聞きました。今年もですが、去年も、2月3日の国公立入試などに山場を残している人も多く、合格しても別のチャレンジを考える人がいて、翌日以降の受験プランやアドバイスなど、細やかに寄り添いたいときに、本当に申し訳なかったです。ほかの先生方が受験生へのフォローをくださり、子どもたちも結果を出していきました。
 
渦中にいると目の前のことでいっぱいになる時期ですが、一年前のその朝、校門で見送った教え子の晴ればれとした笑顔が、もう1年経って制服を着た大人びたものに変わっています。彼らが、「先生、僕、この学校に入れて良かった。楽しいです」などと言う先輩になり、「今年は落ち着いて過ごせます」と笑うお母様を見て、本当に頑張ったね、変わらず素敵な笑顔だね、ご家族の絆が深まりましたね、と改めて思う。何年経っても、誰のことを思い出しても涙がでます。
 
今年の人たちのことも、今は、最後にできるささやかな応援と調整をしながら、ただただ、その子のすべてを祈る思いです。
 
 
 
この先・・・入試が変わって教育も変わって、そうしたら、受験の風景も変わるのだと思います。
 
そうしたら、こんな心臓破りの受験を、11,12才の子どもやご家庭が乗り越えなくてもよくなるのだろうか。とりまく教育産業の大人たちも少し違う種類の熱を発するようになったりするのだろうか。
 
私は、自分も、ちょっと片田舎でぼんやりとした形だけれど、中学入試を経験しています。2月1日の朝、雪が残る道を、母と一緒に受験会場に歩いた朝のことを、毎年思い出します。その冬、入院していた父のことも。なんだかいつも自宅のこたつで留守番していたイメージの、妹や祖母のことも。塾で、日曜日にも時間外の授業に呼んでくれ、長引く学習にお昼ごはんまで差し入れてくれ、合格のときはケーキも用意してくれた、国語の先生のことも。
 
 
中学入試は記憶に深く刻まれやすいものだと思います。入試は、そもそも選んだ進路についてくるもので、入学前のプロセスにすぎないのかもしれないけれど、それでも。
 
 
私は、小学生の教育を考えれば、小学校の学習とかけはなれた独特の中学入試対策が行われることを、良いと思っているわけでは全然なくて、特に「中学入試をゴールにする学習」については、大きな危惧を感じています。そうでない健全な入試対策のプロセスと、受験の意味を考えてきたので、自分たちの教室の子どもたちは、当日、晴れやかな顔で会場に入り、中学生になっていくのだと思っています。文部科学省も、現状の入試への危惧は、さまざまな場で言葉にしています。
 
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朝日新聞2016年2月1日夕刊

 
 
ただ、今年の2月を迎えて思うのは、どうか、この先、中学入試が、より良いかたちに変わっても、これまでの入試を体験してきた子たちの、そのひとりひとりの体験や育ちまでを否定するようなことは、されないでほしいということです。
 
今の中学受験を体験した子ども達にも、伝えたい。これからの時代、下の世代が違う教育を受けて育っていくかもしれないけれど、それも否定せず、だけれど、あなた達も誇りをもってほしい、と。すべての結果や、その後の学校生活ももちろん、入試当日の空気につまっていたものは一生の力に変えられるはずです。
 
大人が用意する環境で学習し、当日の会場でひとり席に座る彼ら。人として、粘り強くものごとに臨む力をつけ、ゴールに向かって長期の対策の道を歩んだこと。いつまでも応援し、誇りにも思っているし、信じているよ、と思います。
 
きっとたくさん知識も詰め込んだし、反射的に答えを書くようなパターンも身につけただろうけれど、それは、人の世の叡智を身につけたのでもあるから、どうか、これからの環境では、それを活用する脳のスイッチを入れ、その体験を重ねながら、これからの社会で通用する力を育てることを、していってほしいです。
 
 
 
そして、塾。シフトチェンジの動きのなかで、子どもたちへの愛や教育への誠意を、忘れないでほしいです。子どもの人生を歪めることを、安易にするようなビジネスがなりたってはいけないと思います。
 
入試で使う力は、そのまま、入学後の授業で必要とされる力のはずなので、学校はそういう試験を作ってどんな力がほしいか伝えて欲しいし、受験対策をさせていく塾などの現場では、入学後に活用できるような力を習得できる授業を開発することを、していってほしいと思います。
 
 
(「そもそも中学入試ってどうなの」という論点もあると思いますが、今日は、2月1日が明けたところなので、中学受験を選択した子ども達への想いにフォーカスをあてて、書きました。)
 
 

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